髪を追う僕

連休明けの月曜日は眠い。休み中の不規則な生活がたたって、

朝からトップスピードにはいれない。いつもなら電車で本を読むのだが、

開いてる席があるとそのまま座り、会社のある駅まで睡眠。

普段、車中の居眠りでは見ない夢をうつらうつら見た。

 

満員電車に飛び乗ろうとする僕を後ろらきたサラリーマンふぜいに、

髪をひっぱられホームに戻される。サラリーマンはひきちぎった髪を

ホームの外へ投げてしまう。その髪を求めて追いかける僕。

改札を抜け髪を追う僕。横断歩道を越えて髪を追う僕。

パチンコ屋の横をすり抜け髪を追う僕。開店前の居酒屋の先へ飛ぶ髪を追う僕。

コンビニの前を飛ぶ髪を追う僕。小学校の校庭を飛ぶ髪を追う僕。

土手から川に向かって飛ぶ髪を追う僕。

「ああ、髪が川に落ちた」

下流に向かって流れていく髪を追う僕。

「ああ、急流にまぎれて髪は消えていく。なんてこった、薄くなりかけた髪を。

命と同じぐらい大事な髪を」

 ってところで、目が覚めた。会社のある駅だ。

髪があってよかった。夢でよかった。ほんとうによかった。

今日からまた、新しい一週間がはじまる。