(今日のコトバ)
口にした言葉は、人の記憶に記録される。
それは紙に残した言葉より力をもつ。
愛を告白されたり、ケンカして怒鳴られたり、嘘をつかれたり。
衝撃的な記憶と同時にインプットされた言葉は、
風化せず頭の片隅にいつまでも残っている。
記憶だからより美しく、よりソフトな映像になっても、
言葉だけはドキュメンタリーで再現される。
忘れようとしても、忘れられないのが言葉の肉声だ。
しかし、紙に残った言葉はどうだろう。
机に貼ったり、座右の名などのように時々読み返す言葉などは
別にして、一度しか読まなかった言葉を思い出せるだろうか。
特別に記憶力が良くて覚えている人もいるだろう。
だが大抵の人はその言葉を、その一行を、正確には思い出せないと思う。
紙に書かれた言葉は、肉声にはならない。
何かのシーンを思い描かなければ、正しく言葉は再現されない。
そう、言葉は肉声になって、はじめて人の記憶に住むことができる。
いま、世界中が情報化社会になろうとし、メールが世界中から
届く時代になっても、面と向かっていわれた言葉にはかなわない。
何かを本気で伝えたい時、記憶にとどめてもらいたい時は、
あなたの肉声を伝えよう。人はその肉声を無視して生きてはいけない。